ナンピンでのFXトレードとEA

ナンピンを漢字で書くと難平となり難は損失のことを表しますので、ナンピンとは「損失を平均化」するという意味になります。ナンピンという言葉は江戸時代の米相場の指南書（教本）にも記述されており、指南書には「難平はするべし」と書かれたものもあれば「やるべきでない」と書かれたものもあり、当時からナンピンでの取引に対しては意見が分かれていました。

ナンピンの取引方法を簡単に説明します。例えば１ドル100円の時にドル円のレートが上がると予想して1万通貨購入したが、予想に反してドル円のレートが下がり98円になったとします。98円のときに追加で1万通貨を購入すれば平均購入価格は99円となるのでドル円のレートが99円に戻れば損失がゼロになります。これがナンピンの基本的な考えです。相場の値動きが予想とは反対方向に動いた時に、平均購入価格を下げるために追加で買い足していく手法とご理解ください。

ナンピンのメリットは損益分岐点を下げられるという点にあります。損益分岐点とはその名の通り損失が出るか利益が出るかの分かれ目のことであり、以下の図を活用しながらメリットを説明していきます。

画像のポイント①のようにドル円が100円の時に1万通貨購入します。その後、ポイント②のように98円にレートが下がった時に1万通貨を追加購入します。ポイント③のようにこの時点での平均購入価格と損益分岐点は99円となり以下の計算式で導き出されます。ドル円が99円に戻れば損益はプラスマイナス0、ドル円のレートが99円以上になれば利益が出ます。

（100円✕1万通貨　＋　98円✕1万通貨）÷　2万通貨　＝　99円　

さらにポイント④のようにドル円が下がり96円で1万通貨購入すれば、ポイント⑤のように98円が損益分岐点となります。計算式は以下となります。

（100円✕1万通貨　＋　98円✕1万通貨　＋　96円✕1万通貨）÷　3万通貨　＝　98円

このように、最初に100円で購入しただけであれば、レートが100円に戻ってくるまで利益が出ることはありません。しかしナンピンによって損益分岐点を下げていけば戻り幅が狭くても利益を得られる可能性が出てきます。これがナンピンのメリットであり裁量取引（手動取引）をおこなう方を中心に活用されています。MT4に導入できるEAでも最近はナンピンのEAが多く出回っています。

ナンピンにはデメリットもあります。ナンピンのFX取引では複数のポジションを同時に保有することが多くなるため通貨購入量（購入金額）がどんどん増加していく可能性があります。購入をするポジション数があらかじめ決まっていればデメリットにはなりませんが、ポジション数をあらかじめ決めることは難しく、FXレートが理想とは異なる意図せぬ方向に長期間動いてしまうと買い増しポジションが増えてしまいます。購入できる資金に余裕があればこのデメリットは解決しますが、そうでなければ損失の広がりを指を咥えて見るしかありません。最終的に損失が膨らみ強制決済（損切）になってしまうと大きな損失となってしまいます。このようにFXレートが理想とは逆に動けば購入量がどんどん増え、損失が大きくなってしまうのがナンピンのデメリットになります。

ナンピンの効果的な取引方法をMT4のチャート画面を使ってご案内していきます。ナンピンのメリットを生かしてデメリットを可能な限り小さくしするためには、ポジション保有のタイミングと通貨購入量のバランスを考えながら効果的にナンピンをおこなっていくことが大切です。

まず以下のMT4のチャートをご覧ください。これはMT4で表示したドル円の日足チャートですが、赤く色づけしたエリアをみると113.4円あたりから104円まで大きく値を下げています。このエリアでナンピンを実行してみることにします。

以下MT4のチャート画像をご覧ください。上記画像の赤く色づけしたエリアをMT4の1時間足でみたときのチャート画像になります。ポイント①をみると、これまでの下げトレンドラインを少し大きめに抜け出していることが分かります。このような相場は下げトレンドの終わりを意味することが多いと言われており、FXレートの上昇が期待できる場面となりますので112.5円で買いのエントリーをおこないます。

この時点で重要となるのは通貨購入量を決めることです。このページではナンピンでの取引について説明していきますので複数ポジションを同時保有することを想定して通貨購入量を決めていきます。当社では資金を10万円として1回のエントリーが1000通貨購入となるような設定が最適だと考えました。最初のエントリーから10円下がり、ポジションの保有数が5個ほどになっても、最大損失を2～3万円程度とできるため、FX取引ができなくなってしまう最悪の事態を避けられます。

それでは以下画像に戻りましょう。ポイント①で1000通貨のエントリーをおこなってから、さらにFXレートが下がり続けました。そしてポイント②で下げのトレンドラインを少し大きめに抜け出したため111.4円で1000通貨を追加購入します。この時点で損益分岐点は111.95円に下がりました。

※損益分岐点の計算方法は「ナンピンのメリット」をご覧ください。

以下MT4のチャートをご覧ください。ポイント②を過ぎてから、さらにFXレートが下がり続けました。先ほどと同様にポイント③で再び下げのトレンドラインを大きめに抜け出しましたので、110.7円で1000通貨購入します。この時点で損益分岐点が111.53円まで下がりました。

以下MT4のチャート画像をご覧ください。ポイント③から一気にFXレートが下り、画像の青い矢印部分で最大のドローダウン（瞬間的最大損失）を記録します。これまでに３つのポジションを1000通貨ずつ保有しているので最大損失は1万9千円ほどになりましたが、これまでと同様にトレンドラインを抜け出したポイント④の108.5円で1000通貨購入します。損益分岐点は110.78円に下がりました。

いよいよ最後の説明に入りますので以下MT4のチャート画像をご覧ください。ポイント④でポジションを保有した後はFXレートが上がっていきポイント⑤で損益分岐点の110.78円を超えました。ここから上昇する分は全て利益になります。決済ポイントは上昇トレンドラインを下に大きめに抜けたポイント⑥の111.5円あたりが最適ですので、これまでに保有した4つのポジション全てを決済します。ちなみに各ポジションで1000通貨ずつ購入していましたので利益は2900円になりました。

ナンピンでの取引の解説は以上になります。エントリーのタイミングと通貨購入量に気を付けることで、ナンピンであっても低リスクでトレードをおこなうことが可能です。

MT4で使える自動売買ソフトであるEAにもナンピンでトレードするものが沢山ありますが、残念ながら長期に渡って利益を出し続けるようなナンピンのEAには出会ったことがありません。

ナンピンのEAが長期的に勝てない理由を説明するのは簡単です。ナンピンは上記で説明してきたように「トレンドラインを抜けたら購入する」という取引を実行することが大切になりますが、EAには「トレンドラインを抜けたら購入する」というプログラムが組み込めないためMT4を使って長期的な成果をあげるEAを作ることは難しいのです。MT4でナンピンのEAを作成する場合「レートが不利な方向に進んだら購入する。30pipsの損失が発生したら購入する。」などの取引ロジックになります。目視でトレンドラインを確認しながら取引をおこなうことが大切となるナンピンは、裁量取引（手動取引）でなければ難しい取引手法になります。

当社が無料で皆様に配布しているMT4専用のEAには、複数のポジションを同時保有するEAが沢山ありますがナンピンとは似て非なるものです。発注量を意図的に分割してポジション保有のタイミングをずらしながらトレードリスクを下げていく仕組みを良く取り入れています。

当社のEAは分割エントリーの手法を取り入れています。例えばEAの設定をおこなうパラメーターで買い増しの最大数を3つと設定した場合、本来1回で発注するロット数を3回の発注に分割して発注します（最大保有数はパラメーターで自由に設定可能）。5分足チャートで稼働するEAでは、5分おきにチャートを分析しエントリー条件を満たしているかを判断します。最初のポジションを持ったあと、5分後のチャートでも条件を満たしていれば二つ目のポジションを発注し、条件を満たさなければエントリーをおこないません。そして5分後にチャート分析をして条件を満たしているかどうかを判断します。この設定であれば、もし発注した直後に相場が逆方向に動いて損切になったとしても、本来の三分の一の損失に抑えられますので損失リスクを軽減することができます。なお、買い増しをおこない同時に保有するポジション数はパラメーターで設定した最大数に制限されます。

当社が無料で配布しているMT4で使えるEAはすべて無料です。興味のある方はページ訪問をきっかに当社の無料EAを取得してみてください。

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